こんな口当たりのほし芋は、ほかにあっただろうか。
能登半島に昔から伝わるかぼちゃ芋は、皮の色は赤褐色で、果肉はかぼちゃのような黄金いろ。甘みがあり、蒸すことでしっとりとした粘質で高濃度に仕上がるかぼちゃ芋。そのDNAはどの芋にも属さない、奥能登・珠洲にしかない芋だという、驚くべき検査結果がでています。

5月に苗植えし農薬は使わす、秋の収穫まで大切に育てられ、太くころころとしたしたかぼちゃ芋だけを厳選。特に良質にできた芋は、翌年畑に植えるための種芋になります。
きれいに水洗いしたかぼちゃ芋は、蒸篭に入れ蒸すこと2時間半から3時間。ゆっくりと時間をかけてやわらく、糖度が増したかぼちゃ芋は、その名のとおり、かぼちゃのように甘く、しっとりとしていて濃厚です。その濃度は、隼人いもの2倍以上にもなります。

蒸し上がったかぼちゃ芋は、ひとつひとつ皮をむき、同じ厚さになるようにと手づくりした芋切り機でスライスしていきます。
一枚ずつ丁寧に並べ乾燥機で4日間、冷風乾燥で旨みを閉じ込め、しっとりとた鮮やかなべっこう色に仕上がります。砂糖などは一切使わず芋がもつ旨みだけで仕上げたほし芋は、香り豊かでやさしい味わい。
食べるまえにさっと炙ると一層おいしくお召し上がりいただけます。

古くから伝わる童話のひとつの「シンデレラ」。シンデレラが乗るかぼちゃの馬車が、ほし芋でできた金の馬車だったら・・・そんな素敵な夢をえがく寺家シンデレラ前浜商店の前濱さんは、家族でかぼちゃ芋やスイカを生産する専業農家です。
ほし芋は奥能登では昔から各家でつくられていました。家業であったタバコ農家にみきりをつけ、ほし芋作りをはじめたのは19年前。あらゆる芋でほし芋をつくってみたが、かぼちゃ芋に勝る芋はなかった。これなら最高のほし芋ができる、前濱さんは確信したという。
しかし、かぼちゃ芋は収穫量が少なく、希少だったため徐々に生産量を増やしてきました。かぼちゃ芋の評判は次第に広がり、60アールの畑に今年は
1500本のかぼちゃ芋を植えるまでになりました。
地元でも希少だったかぼちゃ芋を甦らせた前濱さんも、ある意味、魔法使いなのかも知れません。